「ツイン・ピークス From Z to A」BOXセット、特典映像をご紹介(その2)
もうすぐ発売となる「ツイン・ピークス From Z to A」の特典映像の紹介、第2弾です。
まずはDISC19に収録されているメイキング映像集「カーテンの裏側で BEHIND THE CURTAIN」の中から、非常に印象的だったものをいくつか。ちなみに、このDISC19には298分もの特典映像が収録されています。
「カーテンの裏側で」は「PART1」から「PART18」まであって、DISC19に「PART1」から「PART12」まで、DISC20に「PART13」から「PART18」が収録されています。
もちろんロケ撮影も興味深いですが、リンチの現場は、やはりセットの方がタメになります。必見なのは、何といっても「赤いカーテンの部屋」のセット撮影ですよね。別名ブラックロッジ。「PART2」で、そのセットにシェリル・リーが入ってくるシーンはとてもエモーショナルです。
恐らく、シーズン3の撮影に、シェリル・リーが初めて現れたカットだと思います。リンチはシェリルと抱き合って、ほとんど唇チューしています。主演女優と映画監督の実に久しぶりの再会って感じでグッと来ますよ。
そしてシェリル・リーはこのセットで、台詞を逆から読む練習をしています。iPhoneのアプリを使って練習しているのが今どきです。
また、リンチが「ローラが自分の顔をパカっと開くシーン」の説明をしているのも興味深い。「親指にヒンジがついてる感じでこう開くんだ」ってね。ローラが顔を開いて、顔の中から光がパーっと現れるこのシーンが、一体何を意味しているのか、もちろん一切説明されません。
あと、リンチがローラ・パーマーを宙に飛ばそうとするシーンも面白い。なかなか望んだカットが取れず、リンチがちょっとイラっとしますが、機転とユーモアでピンチを乗り切るリンチ組の楽しい現場が垣間見られる貴重なシークエンス。
裕木奈江の登場シーンもたくさんあります。PART3では、リンチが直接メイクを施すシーンが。この特典見て分かったんですが、裕木奈江の役名「Naido」は「ネイドー」って発音するんですね。ちなみに、「Naido」を逆から綴ると「O, Dian」なんですよ。知ってた? ひょっとして、あれはダイアンのドッペルゲンガーなのか?
裕木奈江のクランクアップシーンも収録されています。スタッフの拍手に、感謝のお辞儀で応える裕木奈江に、リンチも深々とお辞儀してます。
ところで、デビッド・リンチは、トランセンデンタル・メディテーション(TM)という瞑想方法を実践していることでも知られていますが(ポール・マッカートニーやクリント・イーストウッドなど、この瞑想を実践するセレブは多い)、そっち方面もちょっとだけ登場。
「カーテンの裏側で」の「PART12」に、ジェリー・ホーンを演じたデビッド・パトリック・ケリー(DPK)が撮影にやってくるシーンがあります。ここも、リンチとの長いインターバルを経た再会シーンです。そこで、DPKがリンチに向かって語るワケですね。
DPK「オレは覚えているよ。『ワイルド・アット・ハート』のとき、あんたがハリー(・ディーン・スタントン)に言ったことを」
リンチ「何て言った?」
DPK「奴は死にそうだった。あんたはあるヨギーの自伝について話したんだ」
リンチ「そうだったか?」
DPK「肉体から離脱した聖者についてもね。今回も、俺に聞かせてくれよ」
なんと、「ワイルド・アット・ハート」にも出てたんですね、デビッド・パトリック・ケリー。ハリー・ディーン・スタントンと共演してたのか。そしてリンチが、弱っていたハリー・ディーンにヨギーの人生を語ってあげたと。1990年頃の出来事ですね。
特典映像には、モルダーことデビッド・ドゥカブニーや、ナオミ・ワッツや、色んなキャストたちが登場します。そして、当該の俳優がクランクアップを迎えると、リンチがスタッフを集めて、「今日でナオミ・ワッツはクランクアップしました!」って拍手で送り出す儀式を必ずやってます。
そして、その一番最後を飾るのは「エピソード18」つまり、最終話のローラ・パーマーの家の住人メアリーです。これは「カーテンに裏側で」の「PART18」に収録されています。
クーパーとキャリー・ペイジ(シェリル・リー)が、ローラ・パーマーの家に行くシーン。この家の、実際のオーナーであるメアリーが、シリーズの「最後のキャスト」として登場するシーン。
だけど、その映像の主人公は、メアリーではなく、カイル・マクラクランとシェリル・リーなんです。「あのラストシーン」を、リンチが2人に演出しています。
リンチがクーパーに「キミは家を見ている。そして何か思いつく。しばらく見ていた後にね」
「それから前進し、考え、ちょっとかがむ。かがみながら考えている」
「しばらく地面を見てから、思い当たる『今は何年だ?』」
カイル・マクラクラン「今は何年だ……」。リンチに向かって「それは答なのか?」
リンチ「答への入り口だ……そして彼女が引き継ぐ」
リンチ、シェリル・リーに向かって「彼が言う『今は何年だ?』と。それから、自分の中で始まるんだ。キミには聞こえる。頭の中でまた聞こえる……」
リンチ「ここで叫んで。長くなくていい。何度かやるんだ。家を見て。家のあかりが消えるくらいに叫ぶんだ。ロングフェードアウト。キミは暗闇の中、叫び続けて終わり」
シリーズの、一番最後のカットです。
このシーンの意味や、リンチの意図は分かりません。しかし、キャストたちの気分は何となく共有できる。これ見たら、また最終話を見直してしまった……。
特典映像、グッドジョブでした。リンチの演出ってすんごい面白いってことが分かった。しかもマインドフルネスなのよ。
DISC20には、メイキング映像以外にも、ロードハウスのパフォーマンスなんかも収録されています。ドラマシーンが挿入されない、ライブパフォーマンスのみ。これも意外に嬉しいヤツ。ナインインチネイルズとか、レベッカ・デル・リオの圧巻のパフォーマンスもさることながら、女子バンドのユルめの演奏がいい感じで脱力を誘います。そうそう、ジェームズの「ジャスト・ユー」も入ってますよ!
DISC20の特典映像は334分! DISC19よりも30分以上長いんです。
この「From Z to A」は、日本では1000セット限定で、追加生産できない仕様だそうです。価格は2万4000円(税別)。Amazonでのみ購入可能です。