「ツインピークス」初級者ガイド その5
「ツイン・ピークス」は超自然的な謎と知的引用であふれている
「誰がローラ・パーマーを殺したか?」よりも気になる謎の数々
ブラックロッジ
ファースト・シーズン第2話に初登場する、“赤いカーテンの部屋” こと “ブラック・ロッジ”。シワだらけのクーパー、おかしな言葉で喋る小さな男、死んだはずのローラ・パーマーが微笑むという一連のシークエンスは、見るものを混乱させずにいられない衝撃のシーンだ。最初はクーパーの夢として描かれるこのシーンが、実はシリーズ後半に非常に重要な意味を持ってくる。それは、この世に存在する場所なのか? だとしたら一体どこなのか? ある意味、「ツイン・ピークス」最大の謎を解く鍵がここにある。
クーパーの捜査方法
丸太の上に空き瓶を置き、小石に向かって容疑者の名前をつぶやいてから、瓶めがけて投げるという意味不明な行為は、クーパー曰く、夢で学んだ「演繹的捜査方法」だという。FBIの捜査のやり方も、謎だらけなのである。
丸太おばさんの丸太
丸太おばさんが抱えている丸太は、新婚初夜に夫から贈られたポンテローサマツの若木なのだそうだ。実はこの丸太が、不思議な力を持っていることが後に発覚。常人の理解を超えた、スーパーな丸太もシリーズの謎のひとつ。
火よ我と共に歩め
ローラ殺害の現場に落ちていた紙片に記されていた文は「Fire, walk with me.(火よ、我とともに歩め)」。片腕の男の、失われた方の腕にもこの文を刻んだ刺青があったという。「ツイン・ピークス」には、いろんな形で火や炎が登場するが、この文句との関連は?
こんな引用が登場
「愛の招待状」
住民が見ているソープ・ドラマ。主人公の姉妹がひとり二役で演じられているところに、本作の謎を解くカギが?監督は、本作をリンチと共同製作したマーク・フロスト。
ヘスター・プリン
オードリーが父の経営する売春宿「片目のジャック」に潜入した際に名乗る偽名。これは、ナサニエル・ホーソンの古典名作「緋文字」で、不倫の罪を非難されるヒロインの名。
ブルー・ブック計画
アメリカ政府が行っていた宇宙人とUFOに関する機密調査のこと。のちに「X-ファイル」に頻出する。ボビーの父、ブリッグス少佐は、この計画に関わっていた。
シェリー
クーパーがかつて愛した女性に送り、彼の宿敵がミス・ツイン・ピークス・コンテストのクイーン候補者たちに送る詩は、18世紀の英国詩人シェリーの「愛の不条理」という詩。
グラストンベリー・グローブ
町はずれの森の中のブラック・ロッジの入り口がある場所の名。英国にある、ケルトの伝説的英雄、アーサー王の墓があるとされ、毎夏ロックフェスが開かれる場所と同じ名。
鹿
警察署やホテルなど町のあらゆるところに鹿の剥製がある。鹿はキリスト教のシンボリズムでは “救済を求める魂” で、森に住むとされ、この “森” は “肉体” を意味している。
「めまい」
ヒッチコックの名作映画。金髪のヒロインの名はローラの従姉妹と同じ、マデリーン。自殺したヒロインを忘れられない主人公が、ヒロインとそっくりの女性(二役)に出会う。
「ローラ殺人事件」
オットー・プレミンジャー監督、1944年製作のサスペンス。ローラという女性が殺害されるが、その顔は判別できないほど破損されていた。刑事の捜査で思わぬ事実が判明していく。
フクロウ
町のあちこちに出現。丸太おばさんの丸太はローラの死の夜について「フクロウが近づき、闇が彼女を包む」と語る。アメリカ先住民にはフクロウは死後の魂だとする部族がある。
白馬
ローラの母やマデリーンが、自宅の居間で幻視する。ローラの日記の記述、12歳の誕生日に父から子馬をもらったことと関連が? ヨハネの黙示録では、蒼白い馬は「死」の象徴。