「ツインピークス」初級者ガイド その3
ローラの従姉妹、マデリーンの故郷はリンチ自身と同じミズーラだ
デイヴィッド・リンチ
プロフィール
1946年1月20日、米モンタナ州ミズーラ生まれ。科学調査員だった父の仕事から、ワシントン州、アイダホ州、ノース・カロライナ州などを転々として過ごす。高校卒業後は画家を目指してボストンとフィラディルフィアの美術学校で学び、LA へ。第1作「イレイザーヘッド」がメル・ブルックスの目に留まり劇場公開される。その後の活躍はこの通り。
しかし、あえて「ツイン・ピークス」に彼の原点があると言いたくなるのは、本作の舞台である北部の小さな町が、彼が生まれたモンタナ州ミズーラや、幼少期を過ごしたワシントン州の森林地帯を色濃く反映していると彼が語っているからだ。本作のヒロイン、ローラとそっくりの彼女の従姉妹、マデリーンの故郷は、リンチと同じミズーラ。これも意図的な設定なはずだ。金髪のローラと暗褐色の髪のマデリーンは、同じ俳優のひとり二役で演じられ、髪の色以外は同じ容貌。それは、ひとつの事象の2つの側面のようにも見える。するとローラとは、もうひとりのリンチなのかと、リンチの正体を考えながら見たくなる作品でもあるのだ。
さらに「ツイン・ピークス」はリンチ独特のギャグ感覚が爆発する作品でもある。クーパー捜査官が町の保安官事務所を訪れると、入った部屋のテーブルには巨大な鹿の頭部の剥製がゴロンと横たわっている。その光景が、なぜか笑いを誘う。そんな場面も満載なのだ。
リンチも“ もうひとつの顔”を持っている
画家リンチ
リンチの描く絵画は、その筋では有名だ。かつて、91年には東京の東光美術館でも個展を行った実績がある(来日もした)。油彩が中心だが、キャンバスに紙片や綿などを絵の具で塗りこめる作風が独特。グレーを基調にした、どんよりと重い絵ばかりである。
写真家リンチ
リンチの写真は、工場地帯の風景を無機質に切り取ったモノクロ写真から、女性のヌードをモチーフにした退廃的なものなど、一応幅広い。ここに紹介するのは、チーズで作った人間の頭のオブジェに、蟻がたかっているさまを撮影したもの。
音楽家リンチ
「ツイン・ピークス」の作品中でも、ジュリー・クルーズという歌手をプロデュースしているリンチだが、今年は、ついに自身のソロアルバムを発表している。その名も「Blue Bob」というアルバムは、自身のサイト「Davidlynch.com」で購入可能。
家具デザイナーリンチ
90 年代初頭には、家具デザインにも手を染めていたリンチ。写真のエスプレッソ・テーブルなど、木材と錆びた金属を使った作品は、主にロサンゼルスのミッドセンチュリー・モダンな家具屋で販売されていた。ちなみにお値段は800ドル也。